2021ライブ10選(後編)

さて前編に引き続きまして後編でございます。

6. 11/8 SYNCHRONICITY'21 Autumn Live@TSUTAYA O-EAST

前日の興奮覚めやらぬまま立て続けに翌日もライブ参加となりました。こういう感覚も随分久しぶりだなと思うなど。そんなこちらは毎年春に渋谷で行われているサーキット形式のフェス「SYNCHRONICITY」のチームによる企画で、ZAZEN BOYS渋さ知らズオーケストラの対バンでございました。

 

先行はZAZEN BOYS。先日観たばかりで期間もそれほど空いていないということで、まったく同じセットリストということも覚悟していたのですが一曲目から【SUGER MAN】と曲目を変えてきて大興奮。"全人口の80%以上がHENTAI"のキラーフレーズはやはりアガる。またこの日聴いた【破裂音の朝】はリリース以降数多く披露されていてもう何度も聴いていたのですが特別素晴らしかったような気がしました。何がどうという説明は出来ないのですが、今までで一番刺さりましたね。

 

そして後攻は配信ライブで何度か観たことはあったものの生で観るのは初めての渋さ知らズ。いやもう終始圧巻というか、言葉では説明できない謎の大きなエネルギーが常に変化しながら蠢いているような、そんなライブでした。かなりの人数がオンステージしているのに各パートの音はしっかり聴き取れて上下2本のギターはしっかり左右にパンまで振られており、ステージ上だけでなくPAチームの手練っぷりも凄かったです。

アンコールで披露された【ひこーき】の演奏が始まると上手に設置されたダンサーが登る脚立にこっそりのっそりと向井秀徳が登ってきて湧き上がる会場。そしてそのままゲストボーカルとして参加したのですが、歌メロがはっきりした曲はやはり向井秀徳のピッチの正確さが際立つなあと感じました。

 

どちらも大変緊張感のある演奏という共通点はありつつ、緻密に計算されたバンドアンサンブルを繰り出すザゼンに対し、コンダクター不破大輔氏の指揮によって常に自在に変化し続ける渋さという両極端な二組を続けて観られたというのは大変貴重なライブだったなあと思ったのでした。

 

 

7. 12/8 King Crimson@Bunkamura オーチャードホール

遂に観てしまった。「ツアー形式での公演は最後になるだろう」とインタビューで名言されているKing Crimsonの日本公演最終日。

 

開幕早々食らってしまったのがトリプルドラムの超絶技巧アンサンブル。ダブルドラムでもよくあるフレーズを複数人で叩き分けるアプローチだけでなく、一人が叩き始めたフレーズと寸分違わず同じフレーズを二人三人と重ねていく手法も取っており、音の厚みと視覚的な面白さが相まって"トリプルドラム編成であること"の説得力が凄かったです。9つの太鼓とシンバルを生音で同時に鳴らすには9本の腕と足が必要という、ただそれだけのこと。

もちろんドラム以外の演奏も桁違いの演奏力。ボーカルのメロディの下ハモをギターで奏でていたり、ギター2本に混じっても違和感のない歪んだギターのような攻撃的な音色のサックスがソロを取っていたり、渾然一体の演奏とはまさにこういうことなんじゃないかなあと思ったのでした。

 

とにかく全編を通して見逃せない展開であったのですが、やはり個人的なハイライトだったのは1幕ラストの【21st Century Schizoid Man】。ヒリヒリするほど乱高下する展開とラストの畳み掛け、そして演奏終了とともに高く放り投げられた6本のドラムスティックを見て本当に自然にスタンディングオベーションをしてしまいました。もちろん会場も総立ち。これが最後の来日公演になってしまうとしたら本当に残念でならない、心からそう思う素晴らしい公演でした。

 

 

8. 12/21 君島大空 (合奏形態)@USEN STUDIO COAST

吉澤嘉代子や中村佳穂のバンドメンバーとしても活躍するSSW、君島大空の「合奏形態」と呼ばれるバンドを従えての公演。来年1月に閉館が決まっている新木場のSTUDIO COASTで開催されるということもあり、コーストに別れを告げる目的のためにも早々にチケットを確保して臨みました。

 

女性ボーカルのような伸びやかな歌声は【火傷に雨】のような音源よりもハードな音像となった合奏形態の演奏に乗っかっても決して埋もれることはなく、むしろそのギャップで際立つばかり。かと思えばアコギ一本で弾き語った【向こう髪】では超絶高速カッティング&アルペジオを繰り出し、"ギタリスト君島大空"をこれでもかと見せつけられました。正直上手すぎて軽く引いた。

また演奏以外にもステージ上のランプの造形や雲の切れ間から光が射し込んでいるような客席を照らすムービングライトの演出も素晴らしく印象的でした。君島大空という音楽家の存在が世の中に見つかって、この才能が存分に際立つ演出が可能な大きな会場でライブができるようになって本当に良かったなあ、と思ったのでした。

 

 

9. 12/26 馬喰町バンド@くまから洞

私の中ではシャキーン!!とエレ片の音楽でおなじみの馬喰町バンドがレンタル古民家スペースでボーカルマイクすら使わない(ほぼ)完全生音*1のアコースティック編成でのスペシャルなライブを開催するということで、なんだか面白そうじゃないのと観に行ってきましたが、予想通り大変面白く愉快なライブでございました。

 

前述の通りPAなしのアコースティックな編成でしたが、木造建築ゆえに「良く鳴る」と本人たちも言っていた通り建物自体が天然のアンプになっていたようです。ボーカルの武氏は終始声やギターの聞こえを気にしてらっしゃいましたが、コントラバスの音に埋もれることもなくすべての音が素晴らしいバランスで聞こえたのは本当にびっくりしました。「人力サラウンド」と言いながらギターを抱えて自ら客席の間を練り歩き歌うという演出はこの形式ならではですし、距離でボリュームが変わっていくという経験も斬新でした。

 

 

10. 12/28 私立恵比寿中学@東京ガーデンシアター

突然ですがdaisuke氏(@DIECEK)による「私立恵比寿中学、激動の2018-2021年を振り返る」を引用してここまでの私立恵比寿中学をおさらいしておきましょう。

○2018年
12/24 星名美怜 リハーサル中にステージから転落。
→頭を強く打ったため、パフォーマンスにも影響があり、
動きを制限するため「お立ち台」制度が設けられる。
○2019年 結成10周年イヤー
3/13 5thアルバム「MUSiC」リリース
6/22 初の主催フェスを横浜赤レンガ倉庫にて開催
8/4 結成10周年。RIJFレイクステージ出演。
9/20- 秋ツアースタート
10/18 安本彩花 活動休止 ※秋ツアーは続行
12/18 6thアルバム「playlist」リリース 
※リード曲「ジャンプ」は、センターの安本彩花不在のままMVも制作し、その後のイベントでも残された5人で歌唱
○2020年
3/23 安本彩花 活動再開
→春ツアーでステージ復帰の予定が、コロナの影響で全公演中止
4月 舞台「ボクコネ」全公演中止
6/21「ONLINE YATSUI FESTIVAL! 2020」出演
星名美怜もフルパフォーマンスに戻り、実に1年半振りの完全6人編成で無観客配信ライブ。
このステージの最後に披露された完全版「ジャンプ」を観て、泣かないファンはいなかったでしょう。
↓↓↓(ここから2021年追記)
9/19-20 ワンマンライブ「ちゅうおん」開催
10/29 安本彩花 悪性リンパ腫の治療のため活動休止
○2021年
1/1 新メンバーオーディション開催発表
5/5 新メンバー3人加入
7/16 安本彩花 活動再開。THE FIRST TAKEで6人体制での「なないろ」公開。190万回再生。
7/26以降、メンバー5名が新型コロナウイルスに感染
8/29 @JAM EXPOで9人体制初の有観客ライブ(と思いきや、メンバー1名体調不良で欠席)

その後について更に付け加えると、

9/13 柏木ひなた 休養のため「ちゅうおん」後から芸能活動の一時休止を発表

9/25-26 ワンマンライブ「ちゅうおん」開催。遂に9人体制で初の有観客パフォーマンス。

10/18 中山莉子 扁桃腺肥大の摘出手術のため活動休止を発表

11/16 中山莉子 扁桃腺摘出手術を終え退院を報告

11/29 柏木ひなた 年末のワンマンライブ「大学芸会」での復帰を発表

といった、いつまで続くんだこの激動は…*2という流れを経つつ、見事2021年を締めくくるこのライブでは柏木の復帰も決定しフルメンバーでのパフォーマンスとなりました。しかしこう並べて見るとしれっと扁桃腺摘出手術で休んでサクッと戻ってきた中山莉子が微笑ましく見えてきますね。

 

長々と書きましたがそんな3年間の流れがありつつこの日を迎えたということで、歌のみの「ちゅうおん」とはまた違う、ダンス込みのフルメンバーフルパワーの私立恵比寿中学がようやく観られるという感慨が冒頭から押し寄せてしまい1曲目の【イヤフォン・ライオット】の時点で私の涙腺の堤防は限界に。続いて4月の公演でも触れた【Family Complex】が新メンバー3人用の新しい歌詞も付け加えられた新バージョンで披露されたところで2曲目にして私の涙腺はあっさりと決壊してしまったのでした。さてはオメーこの曲好きすぎるな?

 

また、メンバーがそれぞれフィーチャーされる幕間のダンスシーケンスや、平沢進のレーザーハーブを思わせる冒頭のレーザー演出が印象的だった【EBINOMICS】、加入当時のメンバーの映像が流れつつ加入順にメンバーがオンステージする【スターダストライト】など演出面でも新しい試みを多数取り入れており、まさにここ数年の総決算といった内容。ちゅうおんで観たとき以上に新メンバー3人が成長してしっかりとライブ演出に付いていっており、最早"新メンバー"として括る必要はないのではとも感じました。

 

そしてアンコールからはまさかの生バンド登場というこれまた斬新で贅沢な演出。しかも久々の制服風新衣装で初期曲の【えびぞりダイアモンド!!】を披露したのも公演サブタイトルの"Reboot"を意識してのものだったのでしょうか。最後の最後には最新楽曲【Anytime, Anywhere】で大団円。折に触れて言っている気がしますが、最新曲でそのバンドやアーティストの最新形を見せて終わるライブはそもそもの心意気からして最高なんです。すなわち2021年の締め括りにふさわしい最高のライブだったということです。

 

 

ということで2回に分けて2021年に参加したライブの振返りをお送りしました。2022年も引き続き予断を許さない状況がまだまだ続きそうですが、自分にできることを精一杯やりつつ、ライブの参加に限らず様々な形で音楽を楽しむ方法をこれからも模索していこうと思います。

*1:ヘビフォンと呼ばれるガムランを参考にしたというビブラフォンのような自作楽器の音をループさせるためのマイクとアンプのみ。

*2:年末に星名美怜が体調不良により大晦日のももいろ紅白歌合戦と関内デビルの年越し特番を飛ばすというオチがついてしまったのはご愛嬌。